中小の不動産会社が地域ごとに連合を組む例が相次いでいる。京都市では仲介会社が独自のフランチャイズチェーン(FC)を設立。自動車関連の工場建設が続く宮城県黒川郡では21社が物件紹介の共同窓口をつくった。家探しに大手の情報サイトを活用する人が増え、地域の物件情報をきめ細かに提供する地場中小は存在感が薄れてきた。他社との連携で情報量と集客力を高め、大手に流れた顧客を取り戻す。
京都市では不動産仲介会社のグッドライフ(京都市、桜井啓孝社長)などが4月にFC「クラスモ」を立ち上げる。加盟社の店舗やウェブサイトの共通ブランドとして「クラスモ」を使い、各社の物件データを持ち寄ってオンライン上で共有する。顧客の希望に合った物件を探しやすくし、成約率の向上につなげる。
加盟料は初期費用約80万円、月額費用10万円で、大手が展開するFCの約3分の1に抑える。共通ブランドを使わず、データ共有のみの加入もできる。すでに30社以上が加入の意向という。
宮城県の黒川郡にはトヨタ自動車子会社のセントラル自動車が生産進出を決め、関連する部品メーカーなどの拠点設立が相次いでいる。急増する工場要員の転居に対応するため、みちのく開発(宮城県大和町、高橋久志社長)など周辺の不動産会社21社が団結。それぞれの手持ちの賃貸物件をまとめて紹介する任意団体「くろかわ住宅情報バンク」を立ち上げた。
登録物件は約500件。入居希望者から物件照会の申し込みがあると、団体が最適な物件や仲介会社を教える。加入会社の多くは大手不動産会社に手持ちの物件情報を提供して手数料を得ているが、入居希望者と直接触れる機会は少ない。連合して大手を介さない商流を確保し、収益を増やす。
静岡県東部では共同で戸建て住宅などを開発する取り組みが始まる。藤田不動産(静岡県三島市、藤田小夜子社長)など8?9社が集まり来年にも協同組合を設立。組合名義で開発に着手する。
藤田不動産などは1999年に共同広告を手がける任意団体「物件探邸団」を結成したが、任意団体では開発資金を金融機関から借り入れられないため、組合を設立する。連合で信用力を高め、1社では難しい資金調達を可能にしたい考えだ。
帝国データバンクによると2009年の不動産業界の倒産件数は08年比14%増の488件。不況で資金繰りの悪化に苦しむ企業が増えている。
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